安増一志 安増歯科医院 院長 米国歯周病専門医
インディアナ大学歯学部大学院 歯周病専門医課程 2007年卒
− 先生が留学された時期は、歯科医師となって何年目でしたか?
- 卒後3年目です。代診として一通り日本の診療を経験してから留学することが出来たのは非常に幸運なことでした。卒業して臨床経験のないまま留学してしまうと、大学院のプログラムについていけないおそれがあります。
− どのような経緯で留学の道へと進まれたのですか?
- 当時勤務していた福岡県福岡市の船越歯科医院の院長であり、日本の歯周病治療の第一人者である船越栄次先生に相談しました。私は卒後すぐ勤務させていただいたので、米国どころか日本の大学院についても全く知りませんでしたし、それまで留学など考えたこともなく、代診として船越先生のお手伝いをさせてもらっているときに、こんな世界があるのかと初めて知りました。
− 留学先の大学や科を選ぶ上で考慮されたことはありますか?
- 師事していた船越栄次先生が出身だったこともあり、インディアナ大学に決まったのですが、専門医教育(8つの専門課程に別れ、歯周病学はそのうちの1つ)はADA(アメリカ歯科医師会)の指導要領で大きな内容は決まっているため、どの大学に進学してもほぼ同様の教育を受けることができます。ただし、大学の“特色”といったものはあると思います。インディアナ大学は州立大学であるため、良い意味で偏りがなく保守的で、校風がおおらかであると思います。
− 留学中の学生生活はいかがでしたか?
- 話せば長くなるのですが、とにかく大変でした。特に歯周病学の場合は大量の文献との格闘なので、特に最初のうちは、睡眠以外は勉強していると考えていいと思います。インディアナ大学は論文も書かないと卒業できませんので、講義や診療の合間に研究も進めなければなりません。あとは歯学部学生の学生診療の指導助手を毎週するのですが、これも良い経験になりました。
− 週末の過ごし方など、何かエピソードをお聞かせください。
- まず、基本的に大学院生に“オフ”の時間はありません。それでも2、3年目となってくると余裕も出てきますから、クラスメートと試験が終わった時などにバーで飲んだり、気分転換に映画を見に行ったりすることはありました。まとまった休みが取れたときは、旅行に出かけたこともあります。私はルームメートがいたので、時間ができたときはいろんな話をしました。インディアナはいわゆる田舎で、日本人などほとんどおらず、美味しい日本食を手に入れようすれば300km以上離れたシカゴまで出かけないといけませんでした。シカゴで食べるみそラーメンと日本の書店で立ち読みできることがとても楽しみでした。
− これから留学を志す若手歯科医師へ、メッセージをお願いします。
- いわゆる1年程度の短期留学とは異なり、米国の大学院はGPが“臨床専門医”となるためのいわば専門学校です。必要なものは、1.英語力、2.資金、3.推薦状、4.ある程度の臨床経験、5.覚悟です。私に留学の相談に来られた先生には必ず言うのですが、米国大学院に留学することは“お金を払って地獄に堕ちること”です。ですが、その地獄から這い上がって卒業し専門医となった時、その達成感と対価は格別なものだといえます。ですからできることなら留学できる環境にある先生にはぜひ留学を目指していただきたいと思います。